第1265回生物科学セミナー

道管分化にみる細胞内空間秩序の構築

小田 祥久 准教授(国立遺伝学研究所)

2019年07月10日(水)    16:50-18:35  理学部2号館 講堂   

細胞内における極性やパターンの構築は生物の発生に欠かせない。植物では個々の細胞が秩序立ったパターンに細胞壁を沈着することにより細胞の形やはたらきを制御している。私たちは周期的な細胞壁パターンを形成する道管の細胞をモデルとして細胞内における空間パターンの構築機構を研究してきた。その結果、Rho型の低分子量GTPaseが細胞膜上で局所的に活性化し、細胞壁合成のレールとなる微小管を局所的に壊すことにより細胞壁のパターンが作り出されることを明らかにした (1,2)。さらに、このRhoの活性化が反応拡散系により制御されていることや (5) 、微小管によるRhoシグナルの排他作用が細胞壁パターンの形状を制御していること (3,4) 、新規のRho-actin経路が細胞壁形成を局所的に制御すること (6)も明らかとなってきた。今回のセミナーでは、これらの知見に加え植物にユニークな細胞分裂の制御機構への取り組みについても紹介する予定である。

参考文献
1. Oda and Fukuda (2012) Science 337: 1333-1336.
2. Oda and Fukuda (2013) Curr. Opin. Plant Biol. 16: 743-748.
3. Sugiyama et al. (2017) Curr. Biol. 27:2522-2528.
4. Sasaki et al. (2017) Plant Cell 29:3123-3139.
5. Nagashima et al. (2018) Sci. Rep. 8:11542.
6. Sugiyama et al. (2019) Nat. Commun. 10:468 .