第1263回生物科学セミナー

神経回路を作り損傷を治すスーパー分子LOTUS:記憶・学習機能と神経再生医療への応用

竹居 光太郎 教授(横浜市立大学大学院生命医科学研究科)

2019年06月26日(水)    16:50-18:35  理学部2号館 講堂   

 嗅覚情報の2次伝導路である嗅索(LOT)の神経回路形成に必須の分子としてLOT usher substance(LOTUS)を発見・命名した(1)。LOTUSは中枢神経系の再生を困難にする主要因であるNogo受容体に対する内在性の拮抗物質として機能し,またそれとは独立に軸索伸長を強く促進する(2,3)。LOTUSの過剰発現や遺伝子導入は脊髄損傷,視神経障害,脳梗塞後の機能回復を顕著に誘起した(4)。LOTUSの生理機能を利用した再生医療技術を構築し,臨床治験を目指している。他方,LOTUSはシナプスにも多く発現し,記憶・学習機能を亢進する新たな機能が判明した。神経系の発生・再生や脳高次機能を担うユニークな機能分子について紹介する。

参考文献
(1) Sato, Y. et al., Science 333:769 (2011)
(2) Kurihara, Y. et al, Mol. Cell Neurosci. 61:211 (2014)
(3) Kawakami, Y. et al., J. Neurosci. 38:2589 (2018)
(4) Hirokawa, T. et al., Sci. Rep. 7:12119 (2017)