第1209回生物科学セミナー

モルフォゲンWntの分布とシグナル伝達におけるヘパラン硫酸とヘパランの役割

平良 眞規 先生(中央大学理工学部生命科学科)

2019年01月24日(木)    16:50-18:35  理学部2号館 講堂   

Wntのシグナル伝達経路は、ショウジョウバエ胚の分節や翅の形成の遺伝学的解析と、アフリカツメガエル(Xenopus laevis)胚での背側化因子や後方化因子としての働きに関する分子生物学的解析などで良く研究されてきた。一方、濃度勾配によりパターン形成を行う分子、即ちモルフォゲンとしてのWntが、実際に細胞表層あるいは細胞間隙にどのようなメカニズムで分布し、シグナル受容はどのように行われるのかなど細胞外の動態についての知見は乏しかった。そこで我々はXenopus胚を用いてこの課題に取り組んだ。結果、細胞表面にはヘパラン硫酸とその前駆体とされるヘパランがそれぞれ独立のクラスターとして存在することを見出し、さらにそれらが、Wntとその分泌性結合タンパク質Frzbとの相互作用を介して、Wntがモルフォゲンとして機能するためのプラットホームを構成することを明らかにした。

参考文献
Mii, Y., Taira, M., 2009. Secreted Frizzled-related proteins enhance the diffusion of Wnt ligands and expand their signalling range. Development 136, 4083-4088
Mii, Y., Taira, M., 2011. Secreted Wnt “inhibitors” are not just inhibitors: Regulation of extracellular Wnt by secreted Frizzled-related proteins. Dev. Growth Differ. 53, 911–923.
Mii, Y., Yamamoto, T., Takada, R., Mizumoto, S., Matsuyama, M., Yamada, S., Takada, S., Taira, M., 2017. Roles of two types of heparan sulfate clusters in Wnt distribution and signaling in Xenopus. Nat. Commun. 8, 1973.