人類学演習Ⅱ/人類学セミナー2
初期人類の多様性について
諏訪 元 先生(東京大学総合研究博物館)
2018年12月21日(金) 16:50-18:35 理学部2号館 201号室
10月に日本人類学会で行った講演を基に、人類の各進化段階における多様性の諸理解について概観し、若干なりとも整理してみる。研究者によっては、人類の進化の道筋は大きな適応放散の繰り返しであったと力説する。極めて多様な種系統の中からごく少数が「生き残り」、次の適応放散へと変遷するといったシナリオが示されることが少なくない。例えば、350万年前ごろのAustralopithecusが5系統、200万年前ごろの初期Homoの系統が3系統以上あったとも提唱されている。化石記録の解釈においては、ややもすると種系統の細分化とそれによる複雑な進化シナリオが注目されがちであるが、果たして実際どうだったのか。「頑丈型」AustralopithecusとHomo属、あるいは最近その可能性が指摘されているArdipithecusとAustralopithecusの同所的共存は、明らかに異なる適応戦略を持った系統の共存例と思われる。これら以外の「種系統」の同時代の生存は、生態的にも形態的にも大きな違いのない異所的な種もしくは亜種、あるいは集団差に基づく多様性を示していると思われる。
<今後の予定>
1月11日 楢崎 修一郎 先生