第1245回生物科学セミナー

機械学習による生物科学応用

馬見塚 拓 博士(京都大学化学研究所 バイオインフォマティクスセンター)

2018年11月28日(水)    15:00-16:00  理学部1号館東棟 380号室   

近年、人工知能という用語を様々なメディアでよく目にするようになった。人工知能がブームになったのは必ずしも初めてではないが、今回は、以前より実質的な気がする。実際、ネットで何かを買えば必ず別の商品を推薦される。文章を書いていればフレーズを提案され、車を運転していれば白線の中に勝手に戻される。このような体験を誰しもしていると思う。ここで重要なことは、推薦される商品があらかじめ決まっている訳ではなく、推薦商品は過去の購買履歴から決まる。提案文章も、過去の癖から決まる。
 今回の人工知能ブームの裏の主役は機械学習という技術である。一般に、機械学習はデータから規則やパタンを学習し、それらを使って未来を予測する。上記の商品推薦や文章提案の裏に、機械学習が使われていることは容易に想像できる。さて、機械学習は、産業や工学で有効なばかりでなく、もちろん科学にも有効である。
 この講演では、広く生物科学への機械学習応用を紹介・説明したい。具体的には、少なくとも以下の2つの話題を考えている:免疫システムで重要なMHC (Major histocompatibility comple)に結合するペプチドの予測、また、植物育種において獲得したい形質を備えた品種の予測。いずれも機械学習による。