第997回生物科学セミナー

融合変異を利用したATP合成酵素のFoの構造制御と機能解析

三留規誉 准教授(宇部工業高等専門学校)

2014年09月12日(金)    10:00-11:00  理学部3号館326号室   

ATP合成酵素(FoF1)は膜内外のプロトンの電気化学的エネルギーを利用してATPを合成する酵素である。この酵素は、プロトン輸送に伴い回転するFo(a,b2,c10)とATPの加水分解のエネルギーで回転するF1(?3?3???)が共通のシャフトで結合した複合体である。膜内在性のFoはプロトンポンプとして働き、プロトンがaサブユニットとcサブユニットを通る際にcサブユニットからなるc-リングがab2サブユニットに対して回転する。Foのc-リングとab2の結合は回転するほど弱いデリケートな結合のため、詳細な機能解析を困難にしていた。本研究では、構造の安定性が高い好熱菌由来のATP合成酵素を用いて、Foのc-リングおよびaサブユニットを遺伝子的に融合したATP合成酵素を作製し、ATP合成酵素のcサブユニットの数、aサブサブユニットの必須のアルギニン残基の役割を明らかにした。また、c-リングとaサブユニットを融合した変異を利用してab2サブユニットの解離の心配のないFoの精製法を確立した。