第1199回生物科学セミナー

ナメクジウオの生物海洋学

窪川かおる 特任教授(海洋アライアンス)

2018年10月03日(水)    16:50-18:35  理学部2号館 講堂   

ナメクジウオは、無脊椎動物から脊椎動物への進化を明らかにするために重要な研究材料としてよく知られている。脊椎動物の下垂体と甲状腺の起源について、ナメクジウオの相同器官および産生ホルモンを比較し考察する。なお、野生動物であるナメクジウオの研究が成立するためには、採集と飼育および産卵の確立が欠かせず、生息地の保全も必須である。きれいな海の環境指標にもなるナメクジウオは、かつて海洋汚染による個体群消失の危機が続いたが、現在は多くの生息地が確認されている。しかし近年、海洋生物は、温暖化や海洋プラスチックごみなど、新たな海洋環境の変化に曝されている。ナメクジウオが受ける影響について考えたい。

参考文献
・ナメクジウオ 頭索動物の動物学(2005)東京大学出版会
・海洋生物学 -地球を取りまく豊かな海と生態系-(2015)丸善出版
・内分泌と生命現象(シリーズ21世紀の動物科学)(2007)210-246, 培風館
・発生・変態・リズム:時(ホルモンから見た生命現象と進化シリーズ)(2016)44-63, 裳華房