人類学演習Ⅰ/人類学セミナー1

北東アジアにおける遺伝適応の謎を追う

木村 亮介 先生(琉球大学大学院医学研究科 人体解剖学講座)

2018年07月13日(金)    16:50-18:35  理学部2号館 201号室   

 人類学において、東ユーラシアのヒト集団はモンゴロイドとして分類され、さらに、頭蓋や歯の形質の時代変遷および地理的変異から、原モンゴロイドと新モンゴロイドの二つに大別されてきた。また、現代集団にみられる形質(例えば、耳垢のタイプ、アルコール代謝能など)の頻度も、このような分類と相関し、関連付けられている。日本においては、このような二分類は“縄文的”/“弥生的”と表現されることも多い。では、新モンゴロイド的表現型は、いつ、どこで生まれ、如何なる理由で広まったのであろうか?古典的な人類学では、例えば頭蓋形態変化の究極要因を寒冷適応に求める説明がなされてきたが、実証的に示されたものではなく、推測の域を出ない。進化に関する究極要因を実証的に解明することは非常に難しい課題であるが、そこに取り組まないことには人類学の前進はないであろう。本発表では、1)アジア特異的な表現型に多面的に関わるEDAR多型、2)頭蓋顔面形態の集団間分化といったトピックを中心に、北東アジアにおける遺伝適応の謎を解明する取り組みを紹介する。