人類学演習/人類学セミナーⅠ・Ⅱ

ニホンザル集団の空間構造:オスにとっての社会集団とは何か

大谷 洋介さん(京都大学霊長類研究所生態保全分野)

2014年07月04日(金)    16:40~18:10  理学部二号館 402教室   

 霊長類は多くの種が複雄複雌の恒常的な集団を形成するという特徴を持ち、これは他の哺乳類にはあまり見られないものである。集団の中では、厳しい順位関係の形成による競合のコントロールや、他集団への対抗手段としての集団内協力関係の形成など複雑な社会関係が形成されている。母系の複雄複雌群を形成するニホンザルにおいても集団内における個体間の社会関係については知見が蓄積されてきた。しかしその社会関係が個体の空間配置にどのように反映されているのか、空間配置の変異やその決定要因については解明が遅れている。また集団は閉じられたものではなく、一時的な出入が確認されている。これは集団に所属していながら常には行動を共にしない個体の存在を示唆しており、社会への参与の仕方が従来考えられていたよりも柔軟なものである可能性を示している。今回の講演では野生ニホンザルにおける集団内部の空間構造と集団・個体間の空間配置について新たに得られた知見を紹介し、それらに影響を与える環境・社会要因と主にオスの社会参与形態についてお話をしたいと思う。