第1222回生物科学セミナー

見えないものを「みる」!質量顕微鏡の開発と応用例

新間 秀一 准教授(大阪大学工学研究科生命先端工学専攻)

2018年06月14日(木)    17:00-18:30  理学部3号館 412号室   

イメージング質量分析(IMS: imaging mass spectrometry)は二次イオン質量分析法を用いた、材料を対象とする表面分析法を基にしており、1990年代半ばにLAMMA(laser microprobe mass analyzer)のコンセプトをマトリックス支援レーザー脱離イオン化法(MALDI:matrix-assisted laser desorption ionization)に適用しR. M. CaprioliやB. Spenglerらにより生体分子の可視化が初めて行われた[1, 2]。発表当初、質量分析法におけるタンパク質のイオン化でノーベル化学賞が受賞されたことから、多くの研究者がタンパク質のイメージングを目指したが、現在では生体内小分子(代謝物や脂質)ならびに薬物などのイメージングが主流となっている。
 本講演では、まずIMSの方法について概説し、日本におけるIMS研究の先駆けとなる質量顕微鏡の開発コンセプト(図1)や開発エピソードについて取り上げ、質量顕微鏡の治験への導入例を紹介する。また、演者のグループで取り組んでいるがん組織における代謝物可視化事例と測定におけるノウハウについても簡単に紹介したい。

参考文献
1. Caprioli R.M. et al., Anal. Chem., 69, 4751 (1997).
2. Spengler B. et al., J. Am. Soc. Mass Spectrom., 13, 735 (2002).