第1198回生物科学セミナー

自家不和合性機構の多様性と進化

高山 誠司 教授(農学生命科学研究科)

2018年07月11日(水)    16:50-18:35  理学部2号館 講堂   

多くの植物は自己と非自己を識別し、交配の相手として非自己を選択する。自家不和合性と呼ばれるこの性質は、種内におけるゲノムの混合を促進し、多様性を維持する効果があると考えられている。この自家不和合性の自他識別反応の多くは、一座位に連鎖する形でコードされた多型性の花粉因子と雌ずい因子間の相互作用を介して行われているが、解明された両因子の実体は科毎に異なっている。また、両因子を使って「自己」を認識して受精を回避するもの、「非自己」を認識して受精を促進するものなど自他識別の機構も多様である。本セミナーでは明らかにされつつある多様な自家不和合性機構を紹介すると共に、それらが進化してきた道筋について考察する。


参考文献
Kubo, K. et al. Gene duplication and genetic exchange drive the evolution of S-RNase-based self-incompatibility in Petunia. Nature Plants 1, 14005, 2015.
Iwano, M. et al. Calcium signalling mediates self-incompatibility response in the Brassicaceae. Nature Plants 1, 15128, 2015.
Fujii, S. et al. Non-self and self-recognition models in plant self-incompatibility. Nature Plants 2, 16130, 2016.