第1192回生物科学セミナー

神経終末・アクティブゾーンの分子構造基盤と生理機能

大塚 稔久教授(山梨大学医学部・生化学講座第一教室)

2018年03月22日(Thu)    14:00-15:00  理学部3号館 326号室   

学習や記憶、情動、意思決定などの高次脳機能は、脳内の神経回路が適切に信号伝達を行うことで成り立っている。この神経回路を構成する基本ユニットがシナプスであり、神経伝達の強弱を調節して、脳の柔らかさ・可塑性をコントロールする。プレシナプスを構成する神経終末にはアクティブゾーンactive zoneと呼ばれる比較的電子密度の高い領域が存在し、神経伝達物質放出の位置とタイミングを厳密に制御している。アクティブゾーンは、ショウジョウバエ、線虫から、魚類、マウス,ヒトまで進化の過程でよく保存されており、電子顕微鏡による同定以来、伝達物質放出の要となる構造体と考えられてきた。このアクティブゾーンの分子構造は長らく不明であったが、近年の分子生物学、遺伝子改変マウス、超高解像度顕微鏡技術等の発展によって、アクティブゾーンを構成する分子群の単離と解析が進み、アクティブゾーンの微細構造や構成分子の役割が徐々に明らかとなってきた。
 本講演では、我々のグループが見出したアクティブゾーン特異的タンパク質CAST/ELKSファミリーの分子構造とその生理機能を中心に、アクティブゾーンの分子構造基盤に関わる最近の話題を提供する。さらに、シナプス可塑性や高次脳機能の発現におけるCAST/ELKSの役割とその生理的意義について、遺伝子改変マウスを用いた最近の知見を紹介したい。