人類学演習/人類学セミナーⅠ・Ⅱ(人類学談話会)

脳神経系ゲノムDNAの配列と修飾の多様性と精神疾患

岩本 和也 先生(東京大学大学院医学系研究科分子精神医学講座)

2014年06月20日(金)    16:40~18:10  理学部二号館 402教室   

ヒトゲノム情報は、抗体再編成が起きる血液系の細胞を除き、すべての細胞で基本的に同一とみなされている。しかし脳神経系の細胞では、細胞種特異的な一塩基多型・コピー数多型に加えて、染色体異数性、微小欠失、トランスポゾン転移など様々な種類の体細胞変異が生じていると考えられている。これらの体細胞変異は、健常者の脳神経系細胞で観察されているが、現在のところ正確な頻度やパターン、機能的意義など多くは不明である。最近、我々は統合失調症患者の死後脳組織においてレトロトランスポゾンLINE-1のコピー数が増大していることを見出した(Bundo et al., Neuron 2014)。LINE-1新規挿入は神経系の機能に重要な遺伝子に多く生じており、コピー数増大は神経発達障害仮説に基づいた精神疾患動物モデルでも再現されたことなどから、統合失調症の病因・病態と密接に関連していると考えられる。本談話会では、ヒト脳神経系の多彩なゲノム修飾・変異機構について概説すると共に、高次脳機能や精神疾患との関連を議論する。