第1183回生物科学セミナー

横断的オミクス解析による疾患病態解明とゲノム創薬

岡田 随象 教授(大阪大学大学院医学系研究科 遺伝統計学)

2018年03月09日(Fri)    17:00-18:30  理学部3号館 412号室   

ゲノム配列解読技術の発達により、ゲノム研究のボトルネックはゲノム配列の解読から、解読したゲノム配列の解釈へとシフトした。適切な解釈をもたらす手法として、疾患ゲノム情報を多彩なサンプル集団から取得されたオミクス情報と分野横断的に統合する、「横断的オミクス解析(trans-layer multi omics analysis)」が注目されている。特に、細胞組織特異的エピゲノム情報との統合を通じて、疾患ネットワークの解明と疾患病態の鍵となる細胞組織を同定が可能となる。
我々は、先進的に開発した横断的オミクス解析手法を数十万人・100疾患規模で実装し、制御性T細胞のバセドウ病の発症への寄与や、中枢神経系やB細胞の肥満への関与を明らかにし、「どの遺伝子が、どの免疫細胞で、どの免疫疾患の発症に関わっているか」という疾患病態研究の根源的問いに迫る研究活動を行ってきた。
近年、新規創薬におけるコスト増加と成功率低下を受け、ヒト疾患ゲノム情報を活用したゲノム創薬が注目を集めている。我々は、疾患ゲノム情報に基づくインシリコ・ドラッグ・リポジショニング治療薬候補の同定が可能なことを証明した。新たに構築したWHO Anatomical Therapeutic Chemical Classification System(ATC分類)に基づく治療薬ネットワークを用いることで、疾患関連遺伝子と創薬標的遺伝子、治療薬、疾患が構成する網羅的なネットワーク構成を考慮した効率的なドラッグ・リポジショニングが可能と期待される。
本講演では、遺伝統計学における横断的オミクス解析手法の紹介と共に、今後の人材育成についても議論したい。