人類学演習Ⅳ/人類学セミナー4

進化学的視点からみた疾患関連変異

大橋 順 准教授(ヒトゲノム多様性研究室)

2017年12月08日(Fri)    16:50-18:35  理学部2号館 323号室   

これまでに多数のゲノムワイド関連研究(GWAS)が行われ,ありふれた疾患の感受性変異のアリルオッズ比はせいぜい1.5程度であることが明らかとなった。現在みられるありふれた疾患の罹患率は,農耕開始前(新石器時代)までは低かった(その意味でありふれた疾患ではなかった)と考えられるが,その感受性が派生アリルに由来するのか(派生アリルが疾患関連アリルなのか),また感受性多型に自然選択が作用してきたのかどうかについてはほとんどわかっていない。本セミナーでは,最初に,理論解析とコンピュータシミュレーションによって,突然変異によって誕生した派生アリルが,中立の下,正の自然選択作用下,負の自然選択作用下において固定もしくは消失するまでに各頻度階級で費やす滞留時間とアリル頻度スペクトラムを求め,GWASで検出される感受性多型のアリル頻度分布について考察する。次に,
炎症性腸疾患のGWASで報告された一義的関連多型(連鎖不平衡にある他のSNPが存在しない)について,派生アリルと効果量(アリルオッズ比)の関係に着目することで「ありふれた疾患の遺伝素因の進化」について論じたい。
また,最近の正の自然選択によって頻度が増加したと考えられるポリネシア集団特異的な肥満関連変異(CREBRF遺伝子非同義変異)について紹介する。