岩崎研公開ラボセミナー

アンモナイトがフラクタルな模様の貝殻を作るメカニズム

井上新哉 博士(北海道大学シュマの会)

2017年09月25日(Mon)    10:00-11:30  理学部3号館 310号室   

今は亡き絶滅動物であるアンモナイトは、現代では世界中で多産する化石の一つとして親しまれています。そして、化石化した外殻の直下に見られる縫合線と呼ばれる美しい模様、これが人々を魅了する大きな要因であることは否定しようがありません。
縫合線とは、外殻と、その内側に周期的に配置された隔壁(セプタ)との交線です。隔壁は外套膜と呼ばれる組織が鋳型となり、外套膜とまさに同じ形の構造として作られると考 えられています。その為、縫合線の形成メカニズムとは、外套膜の成長プロセスと同義であると言えます。
従来の仮説では、外套膜は何らかの物理的な作用を受けて受動的に変形すると考えられていました。しかし、アンモナイト隔壁の高解像度な3Dデータを得る方法を開発したところ、3亜目4種のアンモナイトの隔壁に管状の構造が観察されました。この様な構造は、外套膜の受動的な変形ではなく、能動的に突起を生やしていたと想定することで、より簡単に説明ができます。
現生の軟体動物であるウミウシには、アンモナイト隔壁とよく似た形の背足突起(セラタ)を持つものがいます。このセラタの成長過程を観察したところ、アンモナイトの隔壁(=外套膜の成長の記録)とよく似ていました。このことから、軟体動物の外套膜には枝分かれし た突起を生やすポテンシャルがあり、アンモナイトはその様にしてフラクタルに分枝した縫合線を形作っていたと考えられました。
私はこの新たな説を"セラタ・セプタモデルと名付けました。このモデルは、現生の動物で普遍的に見られる現象のみを想定している点で、従来の仮説よりも優れていると言えます。