第1139回生物科学セミナー

絶滅裸子植物と被子植物心皮の起源

西田 治文 教授(中央大学理工学部)

2017年10月04日(Wed)    16:50-18:35  理学部2号館 講堂   

 現在の陸上生態系において主たる生産者である被子植物は,中生代ジュラ紀まで地球上に存在しなかった.現在の生態系と生物多様性の歴史を明らかにする上で,被子植物の起源と多様化の過程を復元することは,重要な課題である.
 被子植物の出現時期について,化石記録は今の所白亜紀初期までしか遡ることができない.また,出現場所も未だ特定されていない.何より,被子植物がどのような裸子植物を祖先としているかも不明である.現生の裸子植物には,球果類、ソテツ類,グネツム類,イチョウ類の4群しかない.分子系統学的比較から,これらは被子植物の祖先ではないことが示されている.一方,化石として産出する絶滅裸子植物には,現生の4群に相当するような分類群として10以上が見つかっている.被子植物の祖先は,これらのいずれか,あるいは未発見の絶滅群である可能性が高い.
 植物化石に植物全体の保存を期待することはほぼ不可能である.被子植物の祖先探しにおいては,部分的に保存された化石から現在の被子植物を特徴付ける形態につながるような祖先形質を捜し出す必要がある.「心皮」は被子植物の固有派生形質であり,その形態進化学的起源は今も不明である.本発表では,古植物学的研究と現生被子植物の進化発生学的研究との最近の成果を合わせ,心皮のみならず雄蕊の起源について論ずる.

参考文献
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西田治文.2017.化石の植物学−時空を旅する自然史.東京大学出版会.