第1138回生物科学セミナー

脊椎動物の付属肢形態の進化—海から陸に上がるまで—

田中 幹子 准教授(東京工業大学)

2017年09月27日(Wed)    16:50-18:35  理学部2号館 講堂   

 脊椎動物が陸上に生活圏を広げることを可能にする上で、鰭を四肢へと進化させたことは、脊椎動物史の中でも最も重要な形態進化の一つである。四肢は胸鰭や腹鰭といった対鰭から進化したものであるが、その形態進化は骨格パターンや筋肉パターンの変化など、様々な変化を伴っている。骨格パターンの変化には、先端部に自脚(手根骨/足根骨と指骨)を獲得したこと、及び、複数の基部側の骨が1本になったことがあげられる。また、これまで、祖先型の脊椎動物の対鰭筋は、四肢動物の四肢筋とは異なる様式で形成されると考えられてきた。さらに、ほとんどの両生類では、指の分離が指骨の伸長によってなされていたことから、指間細胞死による指の分離は羊膜類になって獲得された新しい発生様式とされてきた。
 我々の研究室では、このような祖先型の脊椎動物の鰭が羊膜類の四肢の形態に進化するまでにおこった変化が、どのような発生プログラムの変化によるものかを理解することを目的に、様々な脊椎動物胚を使った研究を行っている。本セミナーでは、各種軟骨魚類胚、両生類胚、鳥胚を題材に、発生生物学•分子生物学•比較形態学的手法を使って得られた成果をもとに、鰭から四肢への形態進化のシナリオを提案したい。

参考文献
E Okamoto, R Kusakabe, S Kuraku, S Hyodo, A Robert-Moreno, K Onimaru, J Sharpe, S Kuratani, M Tanaka (2017). Migratory appendicular muscles precursor cells in the common ancestor to all vertebrates. Nature Ecology & Evolution, in press.
K Onimaru, L Marcon, M Musy, M Tanaka, J Sharpe (2016). The fin to limb transition as the re-organisation of a Turing pattern. Nature Communications 7: 11582.
K Onimaru, S Kuraku, W Takagi, S Hyodo, J Sharpe, M Tanaka (2015). A shift in anterior-posterior positional information underlies the fin-to-limb evolution. eLife 2015: 4: e07048.
N Suda, T Ito, R Nakato, D Shirakawa, M Bando, Y Katou, K Kataoka, K Shirahige, C Tickle, M Tanaka (2014). Dimeric combinations of MafB, cFos, and cJun control the apoptosis-survival balance in limb patterning. Development 141, 2885-2894.