第1146回生物科学セミナー
重複した遺伝子の進化
印南 秀樹 准教授(総合研究大学院大学)
2017年09月05日(火) 16:50-18:35 理学部2号館 講堂
遺伝子の重複は、より複雑なゲノム(生命体)へと進化する際に重要な役割を果たしてきた。一方、重複遺伝子のほとんどは、「必要ないもの」と認識されてゲノムから短時間で姿を消すことが知られている。では、どのような重複遺伝子が、どのような条件を満たすとゲノム中に生存し適応進化に貢献するのか?この問題に対する理論的な答えを示したい。理論は集団遺伝プロセスを扱うもので、そこでは突然変異、自然選択、組換えだけでなく、random genetic driftという偶然の要素も重要になる。さらには、gene conversionという重複遺伝子に特有の組換えも深く関わってくる。自然選択の強さや方向性は、重複遺伝子の機能と関係してくる。本セミナーでは、様々な条件下での演者の理論的研究を、実際のデータとともに紹介したい。
参考文献
Innan, H., and F. Kondrashov, 2010. The evolution of gene duplications: classifying and distinguishing between models. Nat. Rev. Genet. 11: 97-108.
“Gene Conversion in Duplicated Genes” 2012 (Special issue of Genes), edited by H. Innan
Innan, H., 2003. A two-locus gene conversion model with selection and its application to the human RHCE and RHD genes. Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 100: 8793-8798.