第1167回生物科学セミナー

リゾリン脂質アシル転移酵素によるリン脂質脂肪酸組成の調節機構

衛藤 樹 特任研究員(国立研究開発法人 国立国際医療研究センター)

2017年09月06日(Wed)    17:00-18:30  理学部3号館 412号室   

細胞膜の主要な構成成分であるリン脂質は、極性基の種類により、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジルセリン(PS)、ホスファチジン酸(PA)などの種類に分類され、さらに2本の脂肪酸の違いにより非常に多くの種類に分けられる。最初にグリセロール3リン酸からde novo経路によって合成され、その後remodeling経路(Lands’ cycle)によって再構築が行われる。
リゾリン脂質アシル転移酵素(LPLATs)はリゾリン脂質とアシルCoAを基質としてリン脂質を合成する酵素群である。ここ10年程の間に何種類もの新しい酵素がクローニングされたため、リン脂質の脂肪酸組成の調節機構について調べ直すことにした。今回は実験系の単純化のためにPCのみに対象を絞り、de novo経路のLPAAT活性とremodeling経路のLPCAT活性がどのようにPCの脂肪酸組成を調節しているかを調べた。
次に脂肪細胞の分化によってLPLATsの発現の変動が見られるかを調べたところ、LPCAT3という酵素の発現が上昇していることがわかった。また、アラキドン酸が入ったPC,PEの割合の上昇も見られ、LPCAT3が脂肪酸組成の変動に関与している可能性が考えられる。
さらに、新しいLPLATが存在しないか探索を行ったところ、既知酵素と同じfamilyの機能未知酵素が22:6-CoAをよく認識するLPAAT活性を持つことを見つけた。この酵素のノックダウンを行うと活性の低下、脂質組成の変動が見られ、内在でも22:6の割合を調節する働きが示唆された。