第1155回生物科学セミナー

哺乳動物細胞のRNA分解制御機構

秋光信佳 教授(東京大学アイソトープ総合センター)

2017年06月08日(木)    17:00-18:30  理学部3号館 412号室   

遺伝子発現量は転写とRNA分解のバランスで規定されている。従って、RNA分解機構は遺伝子発現を制御する上で重要な役割を担っている。従来、RNA分解速度の測定では転写阻害を用いたchase実験が行われてきた。すなわち、転写阻害剤を添加後に経時的にRNAを回収し、注目するRNAの減少を測定してきた。しかしながら、転写阻害剤は細胞に大きなストレスを与えるため、従来法では生理的に異常な状態でRNA分解を測定している可能性が高かった。実際、転写阻害剤が細胞内のRNAの局在を変化させることが報告されている。この問題を克服するため、我々は核酸アナログを使ったRNAメタボリックラベリングを応用したRNA分解測定法(BRIC-seq法)を独自に開発した。本セミナーではBRIC-seq法を用いて哺乳動物細胞のRNA分解制御を研究した例を紹介する。特に、UPF1やPumilio などのRNA結合タンパク質による細胞内RNA分解制御を紹介する予定である。また、RNA分解制御の研究から細胞内の遺伝子発現フィードバック機構の一端が見えてきたことについても紹介する予定である。