第1157回生物科学セミナー

コミカンソウ科における絶対送粉共生の進化

川北篤 准教授(京都大学生態学研究センター)

2017年06月26日(Mon)    16:50-18:30  理学部2号館 講堂   

 熱帯の花、というと派手で色鮮やかなものが思い浮かぶが、実際に
熱帯の森を歩くと、地味で目立たない花をつける植物が驚くほど多い。
こうした植物には、特定の昆虫と共生関係を結び、その結果として特
殊な花を進化させたものが少なくない。東南アジア熱帯に生育するコ
ミカンソウ科カンコノキ属の植物は、3-5mm 程度の小さな緑色の花を
つけ、夜間この花に産卵に訪れるハナホソガ属のガによってのみ受粉
されている。ハナホソガは幼虫がカンコノキの種子を食べて育つため、
花に産卵する成虫は、口吻を使って雄花で能動的に花粉を集め、それ
を雌花につけることで、幼虫の餌となる種子を確保している。カンコ
ノキ属、およびその周辺属の送粉様式を世界各地で調べた結果、約500
種のコミカンソウ科植物が、種ごとに異なる種のハナホソガによって
受粉されていることがわかってきた。本セミナーでは、コミカンソウ
科とハナホソガ属の送粉共生の自然史をはじめ、共生の進化的起源、
種子が食べつくされない仕組み、種特異性の維持機構について、これ
までの研究から明らかになってきたことを紹介する。
参考文献
(Kato et al. PNAS 100: 5264, 2003; Kawakita and Kato Proc R Soc B 276: 417, 2009; Goto et al.
Ecol Lett 13: 321, 2010; Okamoto et al. Proc R Soc B 280: 20132280)