第990回生物科学セミナー

開花期を迎えた低温電顕単粒子像解析法

藤井 高志先生(理化学研究所生命システムセンター細胞動態計測研究グループ)

2014年06月26日(木)    14:00-15:00  理学部3号館3階326号室   

2013年12月にNature誌にUniversity of California, San FranciscoのChengグループにより発表されたに発表されたTRPV1チャネル(カプサイシン結合で有名なチャネル)の低温電顕単粒子解析法による高分解能構造解析は大きな衝撃であった。分子量30万の四量体チャネル分子の構造を3.3 A分解能で決定したというものである。主鎖や側鎖の密度が解像されており、分子モデル構築が可能な密度マップである。また、リボソームにおいても3.2A分解能での構造決定が報告され、低温電顕単粒子解析法は高分解能構造解析決定技術の一翼を占めつつある。
 X線結晶構造解析法は蛋白質を結晶化する必要がある一方、低温電顕単粒子解析法はその必要がない。蛋白質が発現・精製さえできれば、氷包埋し撮影・画像解析を行うことにより構造解析を行える。異なる蛋白質において作業の再現性は結晶化に比べれば、比較的高い。一旦、ある大きさの分子を3 A分解能で解析技術が確立されれば、同様な分子においても適用可能でありハイスループットな技術である。要素技術の向上・ノウハウの蓄積により、サブナノメータ分解能での解析例は2013年に100例を超え、加速度的に伸びている。
 この進展には、これまでに培われた要素技術・ノウハウおよび、新世代のディテクターの登場が大きく寄与している。各要素技術並びに、低温電顕単粒子解析法の現状を概説し、
今後課題になる様々な問題について議論したい。