第1150回生物科学セミナー

発生現象を培養細胞上で再構成することで理解する

戎家美紀 博士(理化学研究所 生命システム研究センター(理研QBiC))

2017年05月18日(木)    17:00-18:30  理学部3号館 412号室   

私達は、発生現象を培養細胞上に再構成している。実際に作ってみることで、現在の理解がどれほど正しいか検証し、さらには予想外の発見をしたい、という動機である。
 私達がこういった再構成研究を始めたのは8年ほど前からである。最初のプロジェクトとしては、細胞間に違い(非対称性)を生み出すしくみの再構成を行った(Matsuda et al., Nat. Commun., 2015)。Delta-Notchシグナルの側方抑制機構を模した遺伝子回路を培養細胞上に作ることにより、隣接する細胞を人工的にコミュニケーションさせた。その結果、元は均一な細胞集団から異なる2種類の細胞を自発的に生み出すことができた。またこの際に、2種類の細胞の比率を制御することにも成功した。
 現在は、細胞の反応拡散パターン形成、遺伝子発現の同調振動、組織の変形、といった発生現象の再構成に取り組んでいる。こういった取り組みの経過とそこからわかってきたことを議論させていただきたい。