人類学演習/人類学セミナーⅠ・Ⅱ(人類学談話会)

塩と健康

下澤 達雄先生(東京大学医学部付属病院 検査部 講師)

2016年12月02日(金)    16:50-18:35  理学部2号館 323号室   

太古生物は海にいたと言われている。すなわち、NaCl が十分にある状態で生命活動が行われた。この際には細胞外の浸透圧が高いため、細胞内の浸透圧を高く保つ機構が発達した。
その後生物が進化とともに陸上生活をするようになると、NaCl は不足することとなる。NaCl が不足すると脱水の危機に瀕するため、体内にNaCl を保持する機構を獲得する必要が出てくる。そこで、発達したメカニズムが腎臓でのナトリウムの再吸収を制御するさまざまなホルモンである。たとえばレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系といったメカニズムが発達した。
その後長い間にわたって塩は大変貴重なものとして扱われ、例えば武田信玄が敵に塩を送ったとか、給料を表すSalary の語源は塩、Salt であるというようなことで現代まで引き継がれている。
しかし、最近では食生活が豊かになり、塩分は過剰な状態になっている。塩分を取り過ぎると体はどのような変化を起こすのだろうか。よく知られている病気には高血圧がある。今回の講義では塩分と健康について、塩分が不足した際、過剰な際の体の反応について解説し、Discussion をしたい。講義の前に半透膜とは何だったか、腎臓の働きとは何だったか、高校の生物の教科書にある程度の知識を復習しておいていただきたい。