人類学演習/人類学セミナーⅠ・Ⅱ(人類学談話会)

ナンセンス変異依存 mRNA分解の分子機構と遺伝性神経・筋疾患

黒崎 辰昭先生(ロチェスター大学 医・歯学部 生化学・生物物理学専攻)

2016年11月25日(金)    16:50-18:35  理学部2号館 323号室   

ナンセンス変異依存mRNA分解機構(Nonsense-Mediated mRNA Decay; NMD)は、真核生物において進化的に保存された、翻訳依存的な細胞内RNA品質管理機構であり、未成熟終止コドン(Premature Termination Codon; PTC)を有する異常mRNAを選択的に認識し分解する。近年のハイスループットシーケンス技術の発展により、ヒトにおけるPTCの多くはpre-mRNA splicingにより産生され、選択的スプライシングの約1/3が、最終的にPTCを有するmRNAを産生すると見積もられている。NMDはまた、少なくとも約10%の全転写産物の発現量を調節しているとされ、特に神経細胞において発生·分化に重要な役割を果たす。
演者は大学院時代、分子人類·分子進化学研究室にて、霊長類におけるマイクロサテライトリピートの分子進化を研究してきた。ヒトにおいて、マイクロサテライトリピートとその異常伸長が原因となる遺伝性神経·筋疾患は幾つかの例が知られているが、大部分の病態メカニズムは未知のままである。今セミナーではこれらの病態メカニズムと mRNA品質管理機に関する幾つかの知見を紹介する。