第1122回生物科学セミナー

ゼブラフィッシュ網膜の発生および再生における神経回路形成機構の解析

吉松 剛志 博士(University of Washington, Department of Biological Structure)

2016年11月22日(火)    17:00-18:30  理学部3号館 327号室   

動物が色を認識するためには、網膜において、異なる波長に対して感受性のある光受容細胞が存在することが必須である。そして、それら異なる種類の光受容細胞からの入力が神経回路で統合されることではじめて色が認識される。しかしながら、どのようにして、異なる光受容細胞からの入力を適切に統合する神経回路が形成されるのかについては未解明な点が多い。本セミナーでは、ゼブラフィッシュを用いて、光受容細胞からの入力を統合する最初の神経である水平細胞の回路形成機構について調べた我々の研究成果を紹介する。ゼブラフィッシュ網膜には、紫外、青、緑、赤色に感受性のある4種類の錐体光受容細胞が存在し、それぞれの水平細胞のサブタイプは特異的な錐体から入力を統合する。錐体の数や神経出力を変化、阻害する遺伝子改変ゼブラフィッシュや、in vivoタイムラプスイメージングといった手法を用いて、発生中における錐体の数や神経出力が、水平細胞のシナプスの数、位置、特異性に果たす役割についての研究結果を前半に紹介する。ゼブラフィッシュは、哺乳類と異なり網膜神経を再生することができ、その機構を明らかにすることは移植等による錐体を補う治療に応用できると期待される。本セミナー後半では、再生中の網膜が、発生中と同様な機構で神経回路を再構成できるかについて行った実験結果をもとに、発生と再生とにおける回路形成機構の違いについて議論する。

参考文献
Yoshimatsu T., et al. (2014) Transmission from the dominant input shapes the stereotypic ratio of photoreceptor inputs onto horizontal cells. Nat Commun. 5:3699.
Yoshimatsu T., et al. (2016) Presynaptic partner selection during retinal circuit reassembly varies with timing of neuronal regeneration in vivo. Nat Commun. 7:10590.