第1082回生物科学セミナー

魚類の脳の性差と性的可逆性

大久保 範聡(農学生命科学研究科水圏生物科学専攻)

2016年11月30日(水)    16:50-18:35  理学部2号館 講堂   

生殖器官に精巣と卵巣の性的二型があるように、脳にもオス型とメス型があり、その違いによって種々の行動や内分泌のパターンに性差がもたらされている。哺乳類や鳥類では、出生前後の時期に脳がオス型かメス型のいずれかに性分化を遂げ、一度分化した脳の性は生涯変わることがない。ところが、魚類の脳は生涯にわたって性的な可逆性を有しており、性成熟後でも容易にその性が逆転し得る。この現象には古くから多くの関心が寄せられてきたが、その機構は明らかとなっていなかった。そもそも、魚類の脳にどのような性差があるのかについても、わずかな知見しかなかった。
そのような状況の中、我々はこれまで、メダカを材料に用いて、魚類の脳にどのような性差が存在し、それがどのように形成され、逆転するのかを明らかにすることを目指して研究を進めてきた。本セミナーでは、その過程で明らかになってきたことを紹介したいと思う。