人類学演習/人類学セミナーⅠ・Ⅱ(人類学談話会)

食の多様性と気候変動-縄文時代前期・中期の事例から-

羽生淳子先生(カリフォルニア大学バークレー校人類学科/総合地球環境学研究所研究部)

2016年07月15日(金)    16:50-18:35  理学部2号館 402号室   

 本発表では、食と生業の多様性の重要性を、人間社会の長期的持続可能性とシステムのレジリアンス(弾力性・復元力)という観点から考察する。出発点は、「高度に特化された大規模な生産活動は、短期的にはより大規模のコミュニティを維持することを可能にするが、生産活動の多様性の減少は、長期的には経済システムとそれに伴うコミュニティの脆弱性を高める」という仮説である。この仮説は、文化生態学における定住と移動のモデル(Binford1980)に由来する。事例研究としては、縄文時代前期~中期を中心とした北東北地方の考古資料を用いる。
発表では、研究対象地域の遺跡から発掘された道具の多様性の定量分析、植物遺体分析、セトルメント・パターン分析、AMS放射性炭素年代測定、花粉分析およびアルケノン古水温解析に基づいた気候変動に関するデータ解析の結果について報告を行う。そして、その結果に基づき、食と生業の多様性、その背後にある人口規模の変化、およびその他の文化的要因と、気候変動を含む環境との間の因果関係を検討する。