人類学談話会

生態学的ニッチモデルを人類文化に応用する

近藤 康久 先生(総合地球環境学研究所)

2014年05月23日(金)    16:40~18:10  東京大学理学部二号館 402教室   

 生態学的ニッチモデリング (ecological niche modeling)は,生物種の既知の生息地点と気温・降水量・標高等の環境情報を入力変数とする機械学習によって,未知の領域(空間ピクセル)における 当該種のニッチの存在確率を推定する手法である。人類の行動が環境条件に大きく制約される状況下にあっては人類文化にも応用可能であり,生態文化 ニッチモデリング(eco-cultural niche modelling)と読み替えることができる。考古学と自然人類学においては,既知の遺跡の位置と古環境データが入力変数となる。
 科研費新学術領域研究「ネアンデルタールとサピエンス交替劇の真相:学習能力の進化に基づく実証的研究」プロジェクトでは, 考古班と古環境班の学際共同研究により,解剖学的現代人ホモ・サピエンス(新人)がヨーロッパ・アジアに進出しネアンデルタール人(旧人)が絶滅する時期 (5~3.8万年前頃)の人類集団の生態文化ニッチモデリングを進めている。本講義では,この研究を主たる題材として,生態学的ニッチモデリング の原理と入力データの準備,地理情報システム(GIS)による解析結果の表示,および出力結果の解釈の方法を紹介し,モデルの可用性と問題点を議 論したい。