塩見研公開ラボセミナー

原核 Argonaute による新規細胞内メカニズムの構造基盤:RNA -guided DNA interference

三好智博 助教(新潟大学 研究推進機構超域学術院)

2016年05月20日(金)    17:00-18:00  理学部3号館 327号室   

Argonauteは、真核生物のRNA干渉の中枢を担うタンパク質であり、約20塩基長のmiRNAやsiRNAと呼ばれる短鎖RNAをガイド分子として、その塩基配列特異的にmRNAに結合し、RNAの切断や分解、翻訳制御等の多種多様なRNAサイレンシング(RNA-guided RNA interference)を引き起こす。これまで、Argonauteタンパク質の研究は、主に真核生物でのみ進められてきたが、真核細胞特異的に発現しているわけではなく、真核生物から原核生物にまで広く発現し機能している。近年、原核生物におけるArgonauteの役割も徐々に明らかになりつつあり、Thermus thermophilusやPyrococcus furiosusの原核生物のArgonauteでは、ガイド分子とターゲット分子が両方DNAであり、真核生物の場合(RNA-guided RNA interference)とは異なるシステム(DNA-guided DNA interference)で機能し、ArgonauteのRNaseH様活性により外来性DNAを分解する生体防御機構としての役割を担うことが報告されている。このように原核Argonauteは、真核Argonauteと比べ、結合認識している核酸の種類が、RNAとDNAで全く異なっている。
一方、光合成細菌であるRhodobacter sphaeroides由来の原核Argonaute(RsAgo)は、DNAだけでなくRNAとも結合することが示されている。我々は、ゲルシフトアッセイによりガイド鎖及びターゲット鎖として認識している核酸の種類を解析することで、RsAgoがガイド鎖としてRNAを、ターゲット鎖としてDNAを認識し、新規のArgonaute 作用メカニズム「RNA-guided DNA silencing」で機能していることを明確にした。さらに、RsAgoによるguide-RNA/target-DNA核酸結合メカニズムの詳細を調べるためにX線結晶構造解析をおこない、その全体像を明らかにすることに成功した。我々は、この構造解析に基づいた部位特異的変異導入による生化学的な解析により、RsAgoの核酸結合認識メカニズムの詳細を明確に示すことが出来た。今回のセミナーでは、このX線結晶構造解析と生化学的解析の結果から明らかになったRsAgoのユニークなguide RNA/target DNA結合認識機構を紹介する。