第1101回生物科学セミナー

原子分解能で綴るArgonaute解体新書

中西孝太郎 博士(オハイオ州立大学 化学•生化学科)

2016年05月20日(金)    13:00-14:00  理学部3号館 327号室   

RNAサイレンシングで中心的な役割を担うタンパク質 Argonauteは、small RNA二本鎖を取り込んだ後に一方の鎖を捨て、残ったガイド鎖とRNA-induced Silencing Complex (RISC) というリボ核タンパク質を形成する。これまでの研究から、Argonauteがsmall RNA二本鎖を取り込む際、両末端の熱安定性や塩基に基づいてガイド鎖が選択されること、またその機会は一度きりでやり直しがきかないことが示唆される。形成されたRISCは、ガイド鎖と相補的な配列を含むmRNAに結合し、脱アデニル化や翻訳阻害を誘導することでその遺伝子発現を抑制する。特に、標的RNAの塩基配列がガイド鎖と完全に相補的である場合はRISCによって直接切断される。しかし、この切断に必要な塩基対形成にArgonauteが関与するのかについてはよく分かっていない。本セミナーでは、構造学的視点からこれらの点について考察する。