人類学演習/人類学セミナーⅠ・Ⅱ(人類学談話会)

交替劇と旧石器文化の現象数理学

青木 健一 先生(明治大学・研究知財戦略機構)

2016年04月15日(金)    16:50-18:35  理学部2号館 402号室   

 アフリカ起源の新人(ホモ・サピエンス)が、旧人(ネアンデルタール、デニソワなど)が先住するユーラシアに進出した時期や経路については不明な点が多い。両者が出会ったことは古代DNAの研究が物語っており、遺跡年代やニッチェの重複を示す研究と併せると、生態学的な競争関係にあったことが示唆される。
 赤澤威教授を代表者とする新学術領域研究(2010年度から5年間)は、旧人が絶滅し(多少の混血はあった)、新人に置き換わった(つまり「交替劇」の)原因・過程の解明を目標とした。この研究を進めるに当たっての我々の作業仮説は、両者の間に文化水準または学習能力の違いがあり、これら(のいずれか)に勝った新人が勝利したというものであった。
 しかし、交替劇は最終的には数(人口)の問題である。つまり、種間競争の結果、旧人が0まで減少し、新人の人口が安定多数を維持するに至った経緯を説明しなければならない。本談話会では、文化水準と人口の相互依存関係を仮定したモデルを記述し、簡単かつ直感的な数学によって交替劇が起きる条件を示す。詳細は下記を参照されたし。

Aoki K 2015. Modeling abrupt cultural regime shifts during the Palaeolithic and Stone Age. Theoretical Population Biology 100, 6-12.
Gilpin W, Feldman MW, and Aoki K 2016. An ecocultural model predicts Neanderthal extinction through competition with modern humans. Proceedings of the National Academy of Sciences USA 113, 2134-2139.