岩崎研公開ラボセミナー

ひとつの生物の転写制御ネットワークを丸ごと理解するために

島田 友裕 博士(東京工業大学化学生命科学研究)

2016年04月22日(金)    15:00-17:00  理学部3 号館 412号室   

生物はゲノムDNAから選択的に遺伝子を発現させることで、環境の変化に適
応しています。遺伝情報の発現の調節は、主にDNAからRNAを合成する転写
の段階で行われ、転写の制御はRNA合成装置のRNAポリメラーゼにシグマ因
子および転写因子が相互作用することで行われます。近年のシークエンサー
技術の発展により様々な生物のゲノムが明らかとなってきており、その生物が
どのような遺伝子セットを持っているかは推測することが容易となってきました。
その一方で、その遺伝子セットをどのように利用しているかという制御について
はゲノム情報のみからは明らかとすることができず、そのゲノム転写の制御シ
ステムを解明することは現在の先端的研究課題の一つとなっております。 そ
こで私たちは、転写制御因子のゲノム上の標的を直接的に同定するGenomic
SELEX法を開発しました。この手法は、試験管内において精製したタンパク質
と断片化されたゲノムDNAのライブラリーを混合し反応させた後、タンパク質と
相互作用したDNA断片を増幅し、そのDNA配列を解析することで、タンパク質
のゲノム上の結合領域、つまり標的遺伝子を同定する、というものです。
Genomic SELEX法では直接的な影響と間接的な影響を区別して同定すること
が可能となり、転写制御の階層性を解明するための強力な手法といえます。
本セミナーでは、多数の転写制御因子について、その直接的な制御遺伝子を
同定することにより、明らかとなりつつある大腸菌のゲノム転写制御のネットワ
ークについてご紹介します。