第1073回生物科学セミナー

マラリア原虫の受精と薬剤耐性:マラリア制圧のための作用点

平井 誠 准教授(順天堂大学 医学部)

2016年06月15日(水)    16:50-18:35  理学部2号館 講堂   

年間2億人以上の感染者と約50万人の死者を出すマラリアは、いまだ人類の脅威である感染症です。この病気の原因はマラリア原虫でハマダラカによって媒介されます。マラリア原虫はハマダラカの体内で受精し増殖したのち唾液腺に集積し、ハマダラカが次のホスト(ヒト)を吸血する機会を唾液腺内で待機します。ハマダラカ体内でマラリア原虫の増殖機構を明らかにすることは、生物学的謎の解明という意味と同時にマラリア撲滅という意義があります。私たちは植物受精の決定因子として最近同定されたGCS1のホモログ遺伝子がマラリア原虫に存在することを見つけました(PbGCS1)。本講義ではPbGCS1の発見の経緯と機能解析結果、およびマラリア原虫の受精にターゲットを絞ったマラリアコントロールについて紹介します。さらに最近私たちが開発した高頻度突然変異ネズミマラリアミューテーターを用いた研究についても講義します。