第1070回生物科学セミナー

レム睡眠の意義と進化 ~分子生物学・神経回路遺伝学からのアプローチ~

林 悠 准教授(筑波大学 国際統合睡眠医科学研究機構)

2016年04月20日(水)    16:50-18:35  理学部2号館 講堂   

夢を生じるレム睡眠は、その役割やメカニズムが脳科学における大きな謎であった。睡眠や意識など生命維持に重要な機能の多くは脳幹が担うが、脳幹は多様なニューロンが混在するため研究が困難であった。私たちは発生学的手法と最新の化学遺伝学・光遺伝学的手法を組み合わせた独自のアプローチを確立し、複雑な脳幹に適用した。その結果、レム睡眠の誘導と終了それぞれを司るニューロンの同定に成功し、さらには、レム睡眠を人為的に増加または遮断できるマウスを開発した。本セミナーでは、これらのマウスの解析結果を紹介し、レム睡眠の機能について考察する。さらに、レム睡眠制御中枢の発生学的起源や、線虫 C. elegans を用いた最新の結果を踏まえ、レム睡眠の進化の過程についても議論する。