第1094回生物科学セミナー

動的予測に基づくケース・コントロール生体時系列データからの情報抽出

山口 類 准教授(東京大学医科学研究所ヒトゲノム解析センター)

2016年03月25日(金)    17:00-18:30  理学部3号館 412号室   

近年の実験・観測技術の発展により、遺伝子発現等の生体に関する様々な種類の網羅的データを比較的容易かつ大量に得ることができるようになった。これからは、それらの膨大なデータから生体に関する有用な情報を抽出し実際の医療や創薬、健康増進につなげていくためのデータ解析技術の開発が喫緊の課題である。特に生体は本質的に動的なシステムであり、その構造や挙動を理解し予測する上で、時系列に沿ってデータを取得し、それらに対して動的モデルを用いるアプローチは有効である。本講演では演者らが開発してきた統計的時系列モデルによる遺伝子発現時系列データからの遺伝子制御構造ネットワーク推定法を紹介する。また、医療へつながる応用として、異なる条件下(薬剤投与、非投与等)において得られた遺伝子発現時系列データセット(ケース・コントロール時系列データ)から、統計的時系列モデルによる動的予測に基づき生体システムの動的特性の差異に関わる遺伝子群を探索する手法を開発し、それを元に早期肺がん予後予測バイオマーカーを発見することに成功した例も紹介する。