岡研公開ラボセミナー

抗利尿ホルモン“バソプレシン/バソトシン”の機能からみる脊椎動物の進化

今野紀文(富山大学大学院理工学研究部 生体制御学講座)

2016年03月10日(木)    16:00-17:00  理学部2号館 323号室   

 脊椎動物が水中から陸上へと進出できた理由のひとつは、我々の祖先が進化の過程で「体内に水を保持する」仕組みを獲得したことにあります。この「水の保持」に重要な役割を果たしているのが、脳下垂体神経葉から放出されるバソプレシン/バソトシンというホルモンです。脱水刺激によって放出されるこのホルモンは、腎臓に発現するV2 受容体を介して原尿からの水の再吸収を促進させることから、“抗利尿ホルモン”とも呼ばれています。我々は、これまでの研究から、バソプレシン/バソトシンによる“水を保持する仕組み”が四肢動物に近縁な魚類である肺魚にも備わっていること、その抗利尿作用は水中では現れないが、夏眠という肺魚の陸生化にともなって現れることを明らかにしました(Konno et al., 2009, 2010)。このことは、バソプレシン/バソトシンによる“水を保持する仕組み”が、脊椎動物の陸上進出にともなって獲得されたことを示唆しています。その一方で、水中生活を営むメダカなどの真骨魚類にもV2 受容体が存在することを見出しました(Konno et al., 2010)。しかしながら、真骨魚類におけるV2 受容体を介したバソトシンの機能は未だ不明です。今回のセミナーでは、真骨魚類におけるV2 受容体を介したバソトシンの腎臓機能について最近の知見を紹介します。