岡研公開ラボセミナー

脊椎動物甲状腺の発生と進化

高木亙(理研CDB 形態進化研究グループ)

2016年03月10日(木)    15:00-16:00  理学部2号館 323号室   

 円口類の一種、ヤツメウナギのアンモシーテス幼生期の咽頭腹側には他の脊椎動物にはない特徴的な器官が見られる。頭索類や尾索類にも類似の器官が存在し、これらはまとめて「内柱: Endostyle」と呼ばれる。ヤツメウナギでは、変態期にこの内柱の一部が甲状腺へと変わることから、今日では脊椎動物の甲状腺と原索動物の内柱は相同であると考えられており、脊椎動物の祖先は原索動物と分岐した後に、内柱から甲状腺へと変化する新規形質を獲得したという説が受け入れられている。
 しかしながら、ヤツメウナギで見られる甲状腺の発生パターンは円口類のものとして一般化されているものの、同じ円口類のヌタウナギにおける甲状腺の発生については、100 年以上前に著された1本の論文以後報告がなく、ヌタウナギもヤツメウナギと同様に、内柱から甲状腺が発生するのか?そもそもヌタウナギの発生過程にも内柱が存在するのか?は不明であった。本発表では、胚の組織観察からこれまで明らかになったヌタウナギ甲状腺の発生を中心に発表し、脊椎動物における甲状腺の進化について考察する。