人類学演習/人類学セミナーⅠ・Ⅱ(人類学談話会)

ゲノム時代の人類学:形態学と遺伝学の融合

木村 亮介先生(琉球大学大学院医学研究科人体解剖学講座)

2015年12月18日(金)    16:50-18:35  理学部2号館 323号室   

ヒトは各々が異なる組み合わせでゲノム変異をもち、容姿や体質など表現型においても多様性が存在する。ヒトの生物学的多様性がどのようにして形成・維持されてきたかを理解するためには、1)ヒトがどのように世界中に拡散し、どのように環境に適応してきたかを知ること、また、2)偶然(中立)の下で生じ得る多様性の大きさを理解することが重要である。近年のゲノム解析技術の発展とゲノム関連データの蓄積は、人類学研究において多くの成果をもたらした。詳細なデモグラフィーの推定、ゲノム中の自然選択領域の探索、古代ゲノム解析、ゲノムワイド関連解析(GWAS)による形質関連遺伝子多型の同定etc.である。大規模なゲノムデータの強みは、網羅的であることと同時に注目する統計量の“分布”を与えることにある。
現在、我々の研究室では、特に琉球列島の人々に焦点をあてながら、アジア人におけるゲノムおよび表現型の特徴と、その特徴が形成されるに至った背景について研究を進めている。さらに、顔貌などの可視形質について、その遺伝要因を同定することにも取り組んでいる。本談話会では、日進月歩で進む集団ゲノム学の研究手法を概観しつつ、我々の取り組みについて紹介したい。人類学において、形態学者と遺伝学者の間で論争が繰り広げられたのも今は昔の話であり、形態学と遺伝学が真の融合を果たす日も近い。