人類学演習/人類学セミナーⅠ・Ⅱ(人類学談話会)

ヒトゲノム難解読領域の構造決定と霊長類比較ゲノム研究

黒木 陽子先生(国立研究開発法人 国立成育医療研究センタ研究所)

2015年12月11日(金)    16:50-18:35  理学部2号館 323号室   

医学、生物学研究で汎用されているヒトゲノム参照配列(NCBI GRCh38/UCSC hg38)は、2003年に国際ヒトゲノム計画により構築された高精度な配列データである。このゲノム配列データは、現在、世界共通のデータセット、言わばGold standardとして、ヒト疾患遺伝子同定や診断・治療法の開発を進める医学研究から、様々な生物とヒトとの比較解析から種固有なゲノム領域の特定を目指す生物学・進化学研究など、幅広い分野において利用されている。この配列データを基盤として、多くの研究成果が生み出されてきた一方で、この配列データは完全なものではなく、未解読(ギャップ)領域や配列の精度が不十分な領域が存在することが知られている。現在、国内外で、これらのヒトゲノム難解読領域の構造を明らかにすることを目指した、大規模なゲノム解析が進められている。ゲノム研究において、ヒトの特徴を理解するために用いられる霊長類のゲノムデータは重要であり、特に、ヒトと近縁生物種の比較解析は、進化の過程で繰り返し生じてきた複雑なゲノム構造変化の道筋を解明するために必須なものとなっている。
 本研究会では、ヒトゲノム難解読領域の構造解析や個人のゲノム配列構築についての動向を紹介するとともに、これらの研究における霊長類比較ゲノム研究の重要性について議論したい。