人類学演習/人類学セミナーⅠ・Ⅱ(人類学談話会)

蓄積的文化進化を支える学習スケジュールの進化モデル

若野友一郎先生(明治大学総合数理学部)

2015年11月20日(金)    17:10-18:35  理学部2号館 223号室   

人類の進化や急速な分布拡大を考える上で重要なのは、道具利用などの遺伝子に直接コードされているわけではない形質である。新生児は、すでに存在する文化・知識を、他者からの社会学習によって獲得する。その後、既存の知識に、個体学習によって改良を加える。改良は次世代へと伝えられ、世代間に渡る知識の蓄積が起こりえる。これを蓄積的文化進化と呼ぶ。蓄積的文化進化は、サピエンスで起きた技術の急速な発展の一因と考えられる。しかし、蓄積的文化進化に有利な学習戦略が、各個体にとって最適な学習戦略であるとは限らない。知識の学習に割く時間を増やすと、知識の活用に使える時間が減るというトレードオフがある場合に、どのような条件が存在すれば、蓄積的文化進化を支える学習スケジュールが進化しうるかを、数理モデルを用いて研究した。その結果、知識量が適応度にかなり強い影響を持つ場合には、蓄積的文化進化が個体間の競争の結果として実現しうることが明らかとなった。