公開ラボセミナー

階層的なプロセスをモデル化する:階層モデルによるデータ解析

深谷 肇一(統計数理研究所)

2015年11月19日(木)    16:00-17:30  理学部3号館 412号室   

本発表では、生態学で「階層モデル」と呼ばれている一連の統計モデルを紹介する。階層モデルは、観測データを生成するプロセスの階層性が明示的にモデル化された統計モデルである。階層モデルでは生態プロセスと観測プロセスが区別される。これは、観測誤差を含むフィールドデータから関心のある生態プロセスの偏りの少ない推定を行なうために重要であるだけでなく、異なるデータを統合して精度の高い推測を実現したり、調査計画を検討する上でも大きな意味を持つ。
近年階層モデルは、捕獲再捕獲法データ、分布データ、個体群動態データなど、生態学研究で得られる様々なフィールドデータの解析に用いられており(ときに実験室のデータにも有用である)、また多様な拡張が盛んに開発、研究されている。発表ではこれらを概観するとともに、GL(M)Mなどの回帰モデルや状態空間モデル、階層ベイズモデルなど、よく知られた統計モデルとの関連を説明する。また、階層モデルを用いた研究例として、海産無脊椎動物の個体群動態データや魚類環境DNAのメタバーコーディングデータの解析例を紹介する。