第1036回生物科学セミナー

生態系プロセスモデルの開発と環境問題

伊藤 昭彦(国立環境研究所 地球環境研究センター)

2015年10月21日(水)    16:50-18:35  理学部2号館 講堂   

環境問題の対策として、汚染物質除去のためのバイオレメディエーションや温暖化対策のための森林吸収源など、植物および生態系の機能を活用するものも多い。特に地球環境問題では、これらの機能を広域的に評価・予測することが求められ、そのための数値モデルが使用されている。本セミナーでは、国立環境研究所などで開発が行われてきたプロセス・ベースの生態系モデル(VISIT)とそれを用いた広域スケール(典型的にはグローバル)の研究例を紹介する。プロセス・ベースモデルでは、光合成や呼吸、分配、枯死などの生理的プロセスを陽に扱う点で、個体群動態を扱う数理モデル類とは性格が大きく異なっている。限られた情報を用いて生態系機能を広域評価するには、諸プロセスの数式化と観測データの利活用が鍵となることを示す。大気CO2濃度上昇や気候変動への応答シミュレーション例を提示し、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)をはじめとする環境政策への貢献のあり方についても論じたい。