第1042回生物科学セミナー

求愛行動を規定する遺伝と環境-ショウジョウバエの場合

山元大輔教授(東北大学大学院生命科学研究科)

2015年09月04日(金)    16:50-18:35  理学部2号館講堂   

ショウジョウバエのfruitless遺伝子の機能が失われると、雄が雄に求愛するようになり、雌とは交尾もしなくなる。その原因は、fruitless遺伝子が一つ一つのニューロンで働く雄化因子であるため、その機能が失われると雄の脳のニューロンが雌型に変わってしまうからである。こうして、遺伝子が細胞の性差を作り出すことを通じ、性に固有の行動を生み出していることが分かってきた。さらに最近、fruitless変異体の雄が他の雄に強く求愛するようになるには、成虫初期に他の雄と集団生活をすることが必要であることも判明し、遺伝的要因と環境要因の相互作用の実体解明への糸口が得られつつある。