生物科学セミナー 第841 平成191114日(水)16301800

 

講演題目:植物免疫の分子機構

 講演者名:白須  賢(独立行政法人理化学研究所植物科学研究センター)

講演の概要

 

 動植物はウイルス、細菌、糸状菌、線虫などの様々な病原体の脅威に常にさらされている。動物が個々の細胞において病原体を認識し生体防御反応を誘導する自然免疫系と生体防御に特化した免疫細胞が行う獲得免疫系の両方を用いているのに対し、植物は独自の自然免疫系を巧みに用いるという耐病性戦略をとっている。植物病原菌は動物病原菌と同様にエフェクターと呼ばれる蛋白質を宿主細胞内に多数注入して、防御機構を攪乱または抑制し、感染増殖を行う。これに対して植物は特定のエフェクターを認識する抵抗性(Resistance; R)蛋白質を持ち、過敏感反応と称される強い抵抗性反応を誘導する。これまでの研究により数多くのエフェクターやR蛋白質が単離され、R蛋白質の病原体認識機構の理解が深まってきた。最近になってR蛋白質と類似ドメインをもつ動物の自然免疫レセプター群が単離され、動植物の免疫系が共通点を持つことが明らかになってきた。さらにこれらの動植物の免疫レセプター群の機能には真核生物おいて高度に保存されたSGT1タンパク質が関与していることも明らかになり、その活性化メカニズムの解明が高等生物共通の基本的自然免疫システムの理解につながることが予想される。

 

参考文献

 

1) Azevedo, C., Betsuyaku, S., Peart, J., Takahashi, A., Noel, L., Sadanandom, A., Casais, C., Parker, J. and Shirasu, K. (2006) Role of SGT1 in resistance protein accumulation in plant immunity. EMBO J., 25: 2007-2016.

 

2) Takahashi, A., Casais, C., Ichimura, K. and Shirasu, K. (2003) HSP90 interacts with RAR1 and SGT1, and is essential for RPS2-mediated disease resistance in Arabidopsis. Proc. Acad. Natl. Sci. U.S.A., 100: 11777-11782.

 

3) Azevedo, C., Sadanandom, A., Kitagawa, K., Freialdenhoven, A., Shirasu, K. and Schulze-Lefert, P. (2002) The RAR1 interactor SGT1, an essential component of R-gene triggered disease resistance. Science, 295 : 2073-2076.

 

4) Shirasu, K., Lahaye, T., Tan, M.-W., Zhou, F., Azevedo, C. and Schulze-Lefert, P. (1999) A novel class of eukaryotic zinc-binding proteins is required for disease resistance signalling in barley and development in C. elegans. Cell 99(4): 355-366.

 

 

 

理学部生物学科植物学コース