生物科学セミナー  837 平成1910 3日(水)16301800

 

講演題目:ウイルスを用いた植物細胞におけるタンパク質高発現システム      

 講演者名:森 正之(石川県立大学生物資源工学研究所植物遺伝子工学研究室)

 

講演の概要

 

 タバコBYIIをはじめとした植物培養細胞は有用タンパク質生産系として、培地のコストが安い、病原体の混入がない、高度な翻訳後修飾系を持つなどの特徴を持つ。また、その均質性から基礎研究において有効な系として利用されている。しかし、植物培養細胞において外来遺伝子を高発現させるシステムがなくその利用が限定されていた。そこで、植物RNAウイルスの高いタンパク質生産能力を利用し、全く新規な植物細胞における遺伝子高発現系(誘導ウイルスベクターシステム)を開発した。

本システムはRNAウイルスベクターを細胞外から細胞内に接種する代わりに、ベクターRNAのcDNA遺伝子を植物細胞の染色体に組み込み、植物細胞内でcDNAからRNAベクターを転写させる特徴を持つ。さらに、ウイルスベクターの転写は、エストロジェン等の薬剤で制御可能なプロモーターでコントロールされている。したがって、植物培養細胞にエストロジェンを添加するだけで、ウイルスベクターが細胞内で転写、増幅し有用蛋白質が高効率に合成される。その発現効率はバキュロウイルスに匹敵する。誘導ウイルスベクターシステムは培養細胞のみならず植物体にも応用することができる。本セミナーでは新規タンパク発現系について実際の発現例を示しながら解説します。

 

参考文献

Mori, M., Fujihara, N., Mise, K. and Furusawa, I. (2001) Inducible high-level mRNA amplification system by viral replicase in transgenic plants. The Plant Journal 27(1), 79-86.

 

Dohi, K., Nishikiori, M., Tamai, A., Ishikawa, M., Meshi, T. and Mori, M. (2006) Inducible virus-mediated expression of a foreign protein in suspension-cultured plant cells. Archives of Virology 151, 1075-1084.

 

 

 

 

 

 

理学部生物学科植物学コース