臨時生物科学セミナー(第155回)
日 時:平成19年7月4日(水) 16:30〜18:00
場 所:理学部2号館 第二講義室(223号室)
講演題目:植物細胞の大きさはいかにして決まるか? |
講演者名:理化学研究所 植物科学研究センター 杉本慶子 |
講演の概要 生物界において個体、また個体を形成する器官、組織、細胞などの“サイズ”がいかに制御されるかという問題は基礎、応用研究上非常に重要な問題であり、近年脚光を浴びている研究分野のひとつである。我々のグループではこれまでこの問題を特に“細胞サイズの制御”といった視点からから解明するための研究を行ってきた。核内倍加(endoreduplication)は核内染色体が細胞分裂を経ることなく複製する現象で、動植物を含む真核生物に広く見られるが、古くからの研究により倍加した核相(ploidy)と細胞サイズの間にしばしば正の相関関係が見られることが知られている1。こうした特性は農業的には植物体を薬剤処理等によって人為的に倍加誘導し、作物収量を増大するための方法として多くの栽培種に利用されているが、自然界での倍加現象の分子機構については未解明の点が多い。我々は核内倍加が野生型の32Cまで進行せず8Cで終了してしまうシロイナズナの変異体群root hairless 1, 2, 3 (rhl1, rhl2, rhl3)、hypocotyl 6, 7 (hyp6, hyp7)、brassinosteroid insensitive 3, 4, 5 (bin3, bin4,
bin5) を同定し、それらの変異体の解析から核内倍加が細胞サイズの増大に必須であること、さらにこの過程に植物に特異的なDNAトポイソメラーゼVI (topo VI) 複合体が関与することを遺伝学的に明らかにしてきた2,3。また最近行った新たな変異体スクリーニングから核内倍加が32Cで終了せず128Cまで進行してしまう4つの新しい変異体を単離し、核内倍加の負の制御機構に関する研究を進めている。今回のセミナーではこれらの研究から得られた知見をもとに植物細胞の大きさがいかにして決まるのか、またこの過程に核の倍加現象がどのように関わっているのかを議論したい。 関連文献 1.
Sugimoto-Shirasu K and Roberts K (2003). Big it up: endoreduplication
and the control of cell size. Curr Opin
in Plant Biol 6: 544-553. 2.
Sugimoto-Shirasu K, Stacey NJ, Corsar J, Roberts K, McCann MC (2002).
DNA topoisomerase VI is essential for endoreduplication in Arabidopsis. Curr Biol 12 (20): 1782-6. 3.
Sugimoto-Shirasu K, Roberts GR, Stacey NJ, McCann MC, Maxwell A,
Roberts K (2005). RHL1 is an essential component of the plant DNA
topoisomerase VI complex and is required for ploidy-dependent cell growth. Proc Natl Acad Sci |
東京大学理学部生物学科植物学コース