生物科学セミナー

859  平成201015日(水)16301800

 講演題目:ストリゴラクトン−植物の枝分かれを制御する新しいホルモン

 講演者名:山口信次郎 (理化学研究所 植物科学研究センター)

講演の概要

 

シュートの枝分かれは、植物の形態を決定する主要因の一つであり、内生あるいは環境因子によって高度に制御されている。シュートの枝分かれは、まず腋芽が作られ、次にそれが成長して形成される。腋芽の成長を制御する重要な植物ホルモンとして、オーキシンとサイトカイニンが古くから知られている。一方、シロイヌナズナ、エンドウ、イネなどの分枝過剰突然変異体の解析から、オーキシンやサイトカイニンとは別の第3の分枝制御ホルモンの存在が示唆されている。これらの分枝過剰変異体の中には、カロテノイド酸化開裂酵素の欠損変異体が含まれることから、このホルモンはカロテノイドに由来する低分子化合物であることが示唆されていたが、その実体は長年不明のままであった。

 我々は最近、この新規ホルモンがテルペノイドの一種であるストリゴラクトンまたはその関連物質であることを見出した (1,2)。ストリゴラクトンは、そもそも根寄生植物であるストライガやオロバンキの種子発芽を誘導する物質として、植物の根の滲出液から単離、同定された生理活性物質である。さらに最近、ストリゴラクトンは共生菌であるアーバスキュラー菌根菌の宿主認識シグナルとして機能することが明らかにされた(3)。すなわち、ストリゴラクトンは、植物の根から放出される根圏情報物質として他生物とのコミュニケーションに関わるとともに、植物ホルモンとして地上部の形態を制御することが明らかになった。

 

参考文献

1. Umehara et al. (2008) Nature, 455, 195-

2. Gomez-Roldan et al. (2008) Nature, 455, 189-

3. Akiyama et al. (2005) Nature, 435, 824-

文献1,2の解説記事

4. Klee (2008) Nature, 455, 176-

5. Leyser (2008) Developmental Cell, 15, 337-

6. Pichersky (2008) Nature Chemical Biology, 4, 584-

 

理学部生物学科植物学コース