生物科学セミナー 第852回 5月28日(水)16:30〜18:00
講演題目: ジャスモン酸による開花と傷害応答の制御機構 |
講演者名: 石黒 澄衞(名古屋大学大学院生命農学研究科) |
講演の概要 花は植物の生殖器官である。したがって、効率よく受粉するには開花(花弁の伸長)と雄しべ雌しべの成熟を同調させることが重要である。また、害虫にかじられた植物は昆虫に対する忌避物質を生産し、それ以上の食害を防ごうとする。ジャスモン酸(JA)はこのような現象を支配する植物ホルモンである。したがって、JAは必要なときに必要な場所で作られる必要がある。それでは、JA生合成はどのように調節されているのだろうか。JA生合成の最初のステップは葉緑体の膜脂質からリノレン酸を切り出す過程であるといわれている。我々はこの段階に注目し、この反応を行うリパーゼとしてDAD1とDAL1-DAL6を同定した。講演ではこのリパーゼに関する解析を中心に、開花ならびに傷害応答に際してジャスモン酸の生合成がどのように制御されているのか、シロイヌナズナを用いて現在進めている研究を紹介する。
参考文献 1. Sumie Ishiguro et al. The DEFECTIVE IN ANTHER DEHISCENCE1 gene encodes a novel phospholipase A1 catalyzing the initial step of jasmonic acid biosynthesis, which synchronizes pollen maturation, anther dehiscence, and flower opening in Arabidopsis. Plant Cell 13, 2191-2209 (2001).
2. 関本(佐々木)結子、大田啓之 ジャスモン酸類の機能とシグナル伝達 植物細胞工学シリーズ20 新版 植物ホルモンのシグナル伝達 pp188-197 秀潤社 (2004).
3. Claus Wasternack et al. The wound response in tomato --- Role of jasmonic acid. Journal of Plant Physiology 163, 297-306 (2006) Review.
4. Paul E Staswick JAZing up jasmonate signaling. Trends in Plant Science 13, 66-71 (2008) Review. (講演と直接関係ありませんが最近のトピックとして)
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理学部生物学科植物学コース